2015.11.01

心斎橋駅下車、徒歩10分以内で「富山」へ

Store Info

  • 店名お魚工房・いし橋
  • 住所大阪市中央区心斎橋筋1-5-19
  • 電話番号06-6245-7366
  • AREA
  • 4
  • EAST

全国的にやってくる「富山」喚起注意報

今年の春に開業した北陸新幹線。東京-富山を2時間8分、東京-金沢を2時間28分でつなぐそうです。「いえいえ、大阪から北陸には、かの“サンダーバード”があるやんけ」とお思いのアナタ。ワタクシが言いたいのはそういうことじゃない!北陸新幹線の開業は、全国的な“北陸ブーム”を起こすということなんですよ。特に富山湾は日本海最大の外洋性内湾。むちゃくちゃ深い。そのため豊かな漁場に、高度な漁法に…とにかく旨いモンの宝庫なのです。さて、そんな富山、大阪駅からは約3時間の片道約9000円。それを、心斎橋駅下車、徒歩10分以内に短縮する方法があります。

さて、ここは心ぶら街。心斎橋筋商店街で唯一、東西に延びる小路の奥。「お魚工房・いし橋」はここにあります。かつてミナミで「黒部」といえば、口の肥えた旦那はんたちが、こぞって足を運んだ名店。その大将が2014年に開業したお鮨屋さんなのです。関西といえば、明石・淡路・五島列島に紀伊…など西の海にかけては大得意ですね。ところが、こちらが得意とするのは「富山」のネタ。大将の生れ故郷である富山のネタも楽しめるという…希少な希少な希少な一軒なのです。

では、その真骨頂を見てまいりましょう。しょっぱなから「主役」の登場です、「紅ずわい蟹」。10月に解禁となったばかりの逸品がこんなにたくさん。富山・新湊漁港で水揚げされた蟹たちは、お腹を見せて鎮座しています。「紅ずわいの特徴はお腹が赤いこと」と教えてくれる大将。それだけではありません。

みてください、この贅沢な食し方。バカタレ!と怒られそうですが、これは大将が幼少期に紅ずわい蟹をオヤツとして(!?)食べていた時の食し方なのです。サッとゆでて、足をポキンと割り、トントンと打ち付ける、出てきた身を「シュッ」と吸い込めば、身が口中にドッサー!身に水分を多く含んでいる、新鮮な蟹だからこその隠れ技なのです。

大将は富山で生まれ、富山で育ち、大阪や東京での研鑽を経て、「郷土料理を学ぶため」と、再度、富山で過ごした経験があります。ネタの目利きだけではなく、どうすればそのネタの持ち味を最大限に引き出せるのか…「その答えは、地元にしかない」と考えたそう。そして、大阪で前店を開業したときも、漁場の情報収集のため、閉店後に富山まで車を走らせていたのだとか。「それだけ、富山湾は奥が深い、珍しい魚介がいっぱいある」と話す大将。

 

こちらのバイ貝にもご注目ください。お皿に乗るのは白バイ貝、そして越中バイ貝も。直径20cm(!?)ほどはあるでしょうか。実は、地元にはソフトボールほどに大きくなるものも揚がるらしく、県外にはめったに「出ない」とのこと。あまりの美味しさに、地元で「こっそり」食べているのだとか。ずるいなー!!

そんなバイ貝ですが、やはり大きな分、ワタクシたちが知る「それ」よりも旨味が強い!弾力が強いので、時間をかけて煮ると…おどろくほどに柔らかくなります。画像は約10cmのバイ貝煮物。醤油を少し垂らすくらいで、ほとんど味を付けない一品。にも関わらず、一口含むと、ワッサーーーっと旨味が広がるのです。これがバイ貝??これまでのイメージを覆されます。

旨味が強いと言えば…こちらの「げんげ」も見逃せません。ヌメリとクタリとしたルックスの通り、富山湾が誇る「深海魚」なのです。女性の皆様、ゼラチンですよ♪コラーゲンですよ♪大将、これ握ってくださーーいっ!

「“げんげ”は握ってもおいしくないよっ」と即答の大将。げんげを握りにすると、物珍しさからメディアが飛びつくのは一過性のこと。げんげの本当の旨味を引き出すのは「やっぱり、吸物」とは大将の弁。さすが、目利きと最適な調理法を体得してきただけあって、小手先の誤魔化しは断固NO!雪平にはげんげと水を入れて、じっくりと加熱。旨味の随を奥底から引き出してゆきます。

そうして仕上がったのは「げんげのお味噌汁」。皆様、これをいただく機会がありましたら、げんげの身を崩さずに、まずは汁だけ。しかも、会話は一旦中断して!集中して一口…。げんげの甘味がこれでもかってほど広がります。それは魚介にありがちな潮の旨味ではなくて、角の全くない柔らかな、それでいて奥行きある、ふかーーーい深海魚の旨味!げんげの身はトロリとして、軟骨の食感がアクセントになります。

まだ、あります(嬉)。こちらは「黒作り」。皆様、イカの塩辛はご存じですよね?これは、イカの墨を用いた塩辛のような一品。富山の家庭の味なのです。漆黒のカラーにドキリとします。

大将の手さばきで軍艦に。ちなみにこちらのシャリですが、富山県の上白米を使っています。精米の段階でこれ以上ないほど磨きをかけられた、上品な風合いが特徴。富山の米に、富山の家庭の味「黒作り」、そして富山出身の大将の技!先口は墨のインパクト、中口はシャリと調和して、後口は海の味がグラデーションに。余韻がたまらない…一貫です。

さて、みなさん、これなんでしょう?実は蒲鉾(かまぼこ)なんです。富山では蒲鉾も古くから作られており、祝席や贈答品にも頻繁に利用されるそう。そんな特別な蒲鉾が手前のカラフルな2点。この蒲鉾も柔らか&モッチリな食感に驚くのですが、奥の黒いやつにご注目ください。巻いてあるのは、昆布なのです。富山は昆布の消費量が異様に(失礼!)高い県。しかも、出汁などの「見えない仕事」に用いるのではなく…

このようなサス(カジキ)を締め、山菜やアスパラといった春先の野菜を締め、家庭で残ったお刺身を長持ちさせるために締めたり。締めた後にも捨てないで「きちんと食べる」という…主役級の存在感を見せるのです。「蒲鉾も昆布食も、雪深い国の保存食文化」と教えてくれた大将。なるほど!

 

さて、サス(カジキ)の昆布締めを握りで。みてください、昆布を開いた瞬間に糸がびっしり。これはムチン質といってタンパク質の吸収を助ける事でも知られていますが、そんな栄養学よりもワタクシにはこれが「旨いで~、旨いで~」と囁いてるようにも見えます。今日は特別に…

昆布付きのまま握りに。サス(カジキ)を引き立てるかと思いきや、昆布とサス(カジキ)の双方がグンっとインパクトを与えます。どちらも主役、どちらも要!グルタミン酸とイノシン酸が見事にマッチ、これは確かに関西では味わえない味わい方。

ほかにも・・・丸々とした鱈も。新潟と富山を結ぶ在来線駅「越中宮崎」周辺では、この鱈を頭や尾、内臓までも放り込む「鱈汁」なるものもあるのだとか。ここでは、まだら昆布を用いた「たら子付け」が一押しのよう。

そして、富山といえば!の「白えび」も美しい!

これら富山の「宝物」は、週に1~2回、新湊漁港から大将の手元にやってきます。送り元とは約20年の歳月で信頼を置き合い、大将を裏切らない漁場と、漁場を裏切らない大将の仕事がコンビネーション。心斎橋の私たちに、遠い富山の美味を味あわせてくれるのです。それにしても、この量…この鮮度…圧巻すぎます。

でもね、富山だったら東京の方が近いですよね(送料だって安くなるよね)。どうして、大将が大阪に店を構え続けるのか?その答えが深いィィィィすぎるのです。大阪は押し寿司や箱寿司の聖地。握るだけではなく、そおいった伝統的な技法にも大将は魅了されたのだとか。

そこが大将という方の興味深いところで、「鮨」にも「寿司」にも、とことん探求を続ける…貪欲な職人肌。独自に考案した加工寿司にも、探求心が覗えるのです。なんせ、よく知るはずの出身地(富山)へ、再度「はじめから郷土料理を学びたい」と向かうバイタリティ、閉店後に大阪から富山へ車を走らせる心意気。鬼気迫る逸話の数々ですが、カウンターの大将はいたって柔らかなお人柄です。

最後にコチラをご覧ください。この漆黒の丸っとしたのは、さきほどのバイ貝の「肝煮」。これを食べたら、富山湾すっごーーーい、と、絶叫します。ここではあえて、そのお味は伏せますね。びっくりして欲しいので♪そんな「お魚工房・いし橋」では、今回ご紹介したお料理も含む「富山コース」が始まっています。心斎橋駅下車、徒歩10分以内の「富山」へ是非!

  • ◇富山コース/4000円
    ・造り(白えび、ぶり)
    ・酢の物(紅ずわい蟹)
    ・煮物(バイ貝)
    ・焼物(鱈)
    ・鮨(黒作り、サス、干ホタルイカ、蒲鉾)
    ・ご飯(白えび空揚丼)
    ・汁物(げんげ)

    ◇富山三味鍋/2800円
    ・げんげ、鱈、紅ずわい蟹

  • ※全て税別価格・要予約
  • ※季節・天候により料理内容が変更になる場合がございます。

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