2019.04.01

吟醸をめぐる冒険

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「心斎橋で日本酒が飲める店?」

最近苦痛な質問が「心斎橋で日本酒が美味しい店ってどこ?」日本酒、いろんな楽しみ方がありますよね。ラベルを撮ってSNSにアップすることが美味しい人もいれば、60種以上の銘柄を揃える店でいろいろと飲むことが美味しいという人も希少銘柄を追い求める人も。人の数だけ日本酒の楽しみ方は無数にあるので、この手の質問は本当に苦痛。

それでも!日本酒・・・と言うより味わうこと全般に感度の高い方におすすすめしたい一軒がこちら。それは、知る人ぞ知る、「しんぶら街」。かつては呉服屋さんが軒を連ねたアーケード街は、今でも呉服屋さんはもちろん、じつはチョコチョコと美味な店舗が点在します。

そんな一軒が「一夜一夜 別宅 寸菜太福」さん。干物と土鍋で炊いたご飯、そしてお酒のお店。
そして、忘れてならないのが「日本酒」。

1枚カウンターは梻(タモ)。磨きこまれた美しい木目に設置されるのは石造りの焼き場。カウンターで炙りながらちょっと一杯な、お店なんですね。

じゃん!たとえば、こんな海の幸。時計で言うと「3時」の位置から時計回りにいきますよ!明石の蛸、小田原の「とんび」はイカの口部分、長崎の連子鯛に、鳥取の鰆、イトヨリ鯛や鹿児島のトビウオ、そして有頭海老。

実は、店主の藤井さんは数奇な人生を歩んで凝られた方。元フレンチシェフで、外食コンサルタントもされ、カナダでビジネスを打ち立てたことも。いまは、小田原、伊東、北海道に岡山・福島と網羅など全国からの干物を中心に・・・

藤井さんが20年以上の時間をかけて、信頼を構築した漁港の卸さんから仕入れています。その多くが、ご家族で経営する小さな店舗で、「手」が適える「仕事」の逸品に、店主ご自身がほれ込んでいるのです。それだけではありません。

店主・藤井さん自ら育てる、兵庫県養父市関宮のコシヒカリ「蛇紋岩米(じゃもんがんまい)」や宮城県のヒトメボレ「小高有機米」。かれこれ10年以上、それら産地で藤井さんの農業を支えてくれる方々との「産地コミュニティ」とお客様を中心とした「街コミュニティ」で実らせる米。

そのすべての要素が絡まりまして、干物と土鍋で炊いたご飯、そしてお酒のお店「一夜一夜 別宅 寸菜太福」さんは今夜も暖簾を掲げるのです。さて、今回のテーマ「日本酒」に近づいて行きましょう。

店内奥にひっそりと設える日本酒冷蔵庫。舌を鳴らしたくなるようなガーヴがそこに!この体積に入る銘柄数しか置かない藤井さん。それはお酒自体の「回転」を早めて、極力フレッシュな状態に保ちたいゆえ。

仕入れルートは蔵から直接、信頼を置く酒屋さん、など7ルートを確保。選定基準は「僕(藤井さん)の好みで!」とニッコリ。とはいえ、全国の漁港を回り、兵庫県では米作りに専心する藤井さん。ゆく先々で、新しい酒との出会いもあるのだとか。

そんな1本がこちら。純米吟醸「壱」。知るひとぞ知る、神戸酒心館の1本。ノーベル賞晩餐会への提供酒「福寿」も造るところです。酒米は兵庫夢錦100%、酒母を手作業で造る製法の生酛づくり。実はなかなか飲食店に流通しない銘酒なんです。

次は、盛岡は菊の司酒造から「季楽」。春限定の「桜」です。滓(かす)は1%未満のかすみ酒はあわい、あわい、にごり酒ともいいましょうか。絞りたての新酒が出回る季節ならではの1本です。ほのかにやさしい、なめらかでしなやか。まさに桜のような儚さ。

次は、純米吟醸「jewels 30」。京都の30の農家からのコシヒカリで造られた1本。京都は丹後の白杉酒造から。酒造好適米(酒米)ではなく一般米を使用する意欲さはまさにこちらならでは。さらには30のコシヒカリとなれば、密度の高いブレンディッドウィスキーを思わせます。

次は、超辛純米「谷川岳」。名前の結来は群馬県最北部利根川源流に位置する、日本百名山の名峰谷川岳。純米酒でありながら“限界まで”辛口を追求した1本。米の旨みもキレ味も、どちらも叶えた冒険の酒。もちろん、群馬県は永井酒造株式会社から。

次は、純米生原酒「播州一献」。兵庫県宍粟市の山陽盃酒造から。関西で唯一の鉱山貯蔵庫―明壽蔵―をもつことで知られる酒蔵で、播州産の米と水を使った「播州一献」は2018年11月に造られたばかりの“生原酒”。いましか味わえない1本です。

次は、純米吟醸「徳次郎」。兵庫県産の山田錦100%を使用した無濾過生酒。城陽酒造の「限定流通品」。と、いうことは。なかなか味わえないと言っても過言ではありません。蔵開きが各地で行われる時期を経て、どんどんと生酒を味わえる機会が増えています。

さて、そんな銘酒をどう味わうか。もちろん、当店の真骨頂“炙り”でいきましょう。目前の伊勢コンロでは炭がジクジクと熱を帯び、蛸やとんび、有頭海老がじっくりと加熱されます。

まずは蛸!口に含んだ瞬間からジュワーっと旨みのグラデーション!3口だけ噛みしめて、キュッとひとくち。きゃぁぁぁぁハート一口と一杯のかけ算が100にも1000にもなる瞬間。たまらない!一説に、日本酒はワインとは違い「マリアージュ型」味わいではないのだと。

お料理の一口と一口の間を「切る」。その切り方にそのお酒の個性が出るのだと。とはいえ、昨今は食中酒として酸味を高めた味わいのものもあったりして、いま食べてるとんびも、このお酒のおかげでグググンと旨みが増しているし。

そんな疑問を投げかけてみたところ「お酒だけじゃなくて、料理だけじゃなくて、どちらも合わせるから生まれる美味しさはある」と話す藤井さん。「でも、いちばん大事なのは、楽しく味わうこと」とニッコリ。

その土地・その風土と人の「手」が適える「仕事」の逸品、干し物を扱ってきた藤井さんだからこそ、お酒にも、「人の手」に思いを馳せます。日本酒ブームなんて言われているけれど、記号(どこの酒蔵、どんな製法)だけで消費するように飲み乱したり、ネームだけが価値を先歩きしたり、

一過性のブームを煽るような風潮、それに追随する消費シーンの創造。これで、造り手を守ることができるのか?そんな問いかけ。だから、「食べる・飲む・楽しく語り合う」、そんなお酒のある時間を守っていきたいと。

最後はこちらのお酒の紹介で。兵庫県西宮市の「徳若」。基本的には蔵本直売しかしていない銘酒。しかも10年の熟成を経て、藤井さんの手元に。幾つもの人の手や時間をかけられた1本。これ以上語るも野暮ですので沈黙します。 「一夜一夜 別宅 寸菜太福」で今夜あたり一杯どうです??

  • 塩若干し~2名様分~
    3種/3000円
    5種/3500円

    兵庫県養父市関宮のコシヒカリ「蛇紋岩米(じゃもんがんまい)
    宮城県のヒトメボレ「小高有機米」
    各、釜炊き2合 1050円

    美山の卵 300円

    コース料理3000円~

    日本酒グラス480円~
    日本酒一合920円~

  • ※価格はすべて税別

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